野幌森林公園

2021年09月26日

札幌には仕事で頻繁に訪れるものの、あまり機会(余裕)がなく、野幌の森を訪れるのは実に十数年ぶりのことでした。今回は半日、ゆっくりと歩いてみました。前半は天然林、後半は100年を超える高齢級を含むさまざまな人工林。

大麻駅からアクセスし、大沢口から入林。日曜日なので多くの人が訪れていました。さまざまな散策路が縦横に設定されています。

森林の経緯としては、明治期の御料林(皇室所有の森林)から林業試験場の試験林となり、1921(大正10)年に一部が「野幌原始林」として天然記念物に指定されました。周辺農地の水源としての役割も大きかったようです。しかし、戦時中に大量の伐採が行われ、また1954(昭和29)年の洞爺丸台風で大きな被害があり、天然記念物指定は解除され、代わって現在は道立自然公園に指定されています。この、大沢口の付近は一番大径木が残っているようでした。経緯は 残念にも思いますが、一部でも原生的な森林が残っていることは素晴らしいと思います。

ハルニレ。主役とも言える存在で、終始、目につきました。

カツラ。こちらも、すばらしい木が矢継ぎ早にあらわれました。

ミズナラ、ヤチダモ。

ハリギリ。都市近郊の立地であることを忘れてしまいます。

シナノキ。

イタヤカエデ、ハウチワカエデ、ヤマモミジ。

ウダイカンバ、ケヤマハンノキ。

アサダ、サワシバ。

クリ。道北には分布していないのが、この時期残念です。

ホオノキ。

エゾヤマザクラ、シウリザクラ。

アズキナシ。

イヌエンジュ。

コシアブラ。

ミズキ、ミヤマガマズミ。

アオダモ。

トドマツ。天然林の箇所ではどちらかと言えば広葉樹が優勢。エゾマツ類はあまり目立ちませんでした。

ただ、イチイは多いと感じました。直径70cmに達する大径木も。

局所的ではあるものの、他にあまり見たことがないほど密度が高い箇所がありました。

下層植生の優占種。エゾユズリハとハイイヌガヤ。

ツルシキミ。常緑樹が目立ちました。

クマイザサが多い箇所も。

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コゲラ。普段、鳥の写真は狙わないのですが、目の前に飛んで来ました。

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後半。南に行くほど、訪れる人は少なめ。 道に沿ってさまざまな人工林が次々に現れました。看板が立てられているので、履歴を窺うことがことができます。

風倒跡の林分。看板には1958(昭和33)年植栽とあるので、洞爺丸台風の被害地に植えられたトドマツ林だったと思われます。2代続けて風倒にあったことになります。

1964(昭和39)年植栽の57年生シラカンバ人工林。ここも風倒していました。広葉樹林は、針葉樹に比べると風倒リスクは一般に小さいとされますが、このような事例もあるのだと再認識。

2004(平成16)年の風倒後に新たに植栽された箇所もありました。16年生になるヤチダモ林。

トドマツの天然更新の状況を観察している箇所も。

1959(昭和34)年植栽のカラマツ林。洞爺丸台風の跡地と思われます。さまざまな産地の種子から育成したとの記述。

アカエゾマツ。1973(昭和48)年植栽の48年生。

ヨーロッパトウヒ。1918(大正7)年植栽の103年生。

ヨーロッパトウヒと二ホンカラマツとの混交植栽林。1913(大正2)年植栽の108年生。カラマツは野鼠害のため本数が減っているとのこと。成長は同程度。混交人工林にはとても興味があり、詳しい成長履歴を見てみたいところです。

さらにトドマツとミズナラの人工林も。ミズナラが1918(大正7)年の103年生、トドマツは1937(昭和12)年に遅れて植えられた84年生とのこと。どのような経緯なのでしょうか? 成長が良好とは言えませんが、天然林のようでした。

広葉樹「試植林」の看板。ミズナラ、トネリコ、ハンノキ、ホオノキ、ヤマモミジ、キハダなど、とあり、さまざまな「試植」が行われたことが伺われます。残念ながら、どれが植栽木かほとんどわからない状況でした。図面などあるのかな?と気になります。

1914(大正3)年植栽の107年生ヤチダモ林。中川研究林の林分と同程度の成長に見えました。こちらも施業履歴(間伐など)が知りたいです。

ヤチダモに隣接する、同じ年に植栽のカラマツ林。成績はいまひとつ?

ヒノキ林。看板が見当たりませんでしたが100年生以上? 道内では貴重な林分と言えます。

ストローブマツ。1909(明治42)年の植栽とのことなので112年生。成長がよく、ここでの成績が、その後の道内への普及につながったと言えるかもしれません。

スギ林。ストローブマツと同じ、112年生。看板には「寒さが厳しく生育があまりよくありません」とありました。さまざまな人工林を見て、お腹がいっぱいです。

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最後に「昭和の森のクリ」へ。「森の巨人たち100選」の看板もたっています。かつてから「ご神木」として取り扱われ保存された木だそうです。上部が折れて少々痛々しいものの、150cmに近い直径でそびえていました。

登満別口から帰途へ。日曜は1日3本しかないバスにちょうど時間が合いました。