小豆島 海から山へ

2022年11月02日

秋休み、最初の一日。瀬戸内海で淡路に次いで2番目に大きい面積150平方kmの島へ。森林のイメージはあまり強くありませんが、森林率は68%と香川県全体(47%)にあっては高い値です。年平均気温15℃、年降水量1,100mm という温暖少雨な気候の中、瀬戸内海で一番高い山(最高標高817m)もあり、複雑な地質・地形もあいまって多様な森を見ることができました。

休み中の急な予定変更があり、空いた一日に、急遽訪れてみることになった次第。この島に行くのははじめてです。人口は2万人余、名所・観光地も豊富。調べてみて、各所から航路がある(実に8航路)ことに軽く驚きました。

この時期、北海道から訪れると、強い陽ざしがまぶしいです。


神浦(こうのうら)

旧池田町、四国に向かって延びる三都半島の西側。湾につき出て見えるのが皇子神社がある標高55mの権現山。

静かな波音の海岸近くにくるまを停めて、神社の入口へ。この社叢は国指定天然記念物となっています。

社叢を埋め尽くすのはウバメガシ。暖地に来たことをしみじみと感じます。

どんぐりが多く実っていました。

イブキ(ビャクシン)。海岸沿いに分布します。山の北斜面はとくに優占度が高い自生地で、国内では屈指の規模なのだそう。

クロマツ、イヌマキ。

ネズミモチ。

イヌエンジュ、ハゼノキ。

石段を中腹まで登ると社殿。この先には行けなかったので、看板に記載のあった樹種の多くは見ることができませんでした(トベラ、クスドイゲ、チョウジガマズミ…)。

モクゲンジ、これは自生でしょうか? 植樹されたザクロ。

神社に来る人はいませんでしたが、海岸近くには大勢の人が。

ちょうど「瀬戸内国際芸術祭2022」の期間中で、この周囲にも10を超える野外展示があったようです。


土庄(とのしょう)

土庄町の宝生院 。特別天然記念物に指定されたイブキを見るために立ち寄りました。

ここではシンパク(真柏)の名で呼ばれています。応神天皇の手植えと伝えられ、根元の周囲長は16.6mに達する巨木。


中山

旧池田町に戻り、標高130mほどの中山集落。南北朝から江戸時代に起源をもつという千枚田。ここも芸術祭の会場になっており、大勢の人で賑わっていました。

滋味深い町なか。里山の歩道を歩きたかったのですが、時間の都合で割愛。

アベマキ、カキノキ。

こうして巡っていて、車窓から針葉樹人工林を見かけることがありませんでした。調べてみると、島を二分する自治体のうち土庄町の人工林率は約15%とのこと(香川県全体の値も26%と、北海道と同等)。樹種はヒノキが多いようです。もう一方の小豆島町の森林率は見つけられなかったのですが、森林ゾーニングで「木材生産機能維持増進森林 」の比率は9%、現行の地域森林計画における伐採計画量はゼロなので、やはり相当に低いことが窺われます。

島は古来、海運の要衝として塩や石材を産出してきました。急峻な地形が多いことも関係するのでしょうが、島の社会環境だと、人工林で木材をを多く作るメリットは大きくなかったのかもしれません。


神懸山(かんかけやま)

今日のメインはここ。寒霞渓(かんかけい)の名で知られますが、これは明治期の命名。日本書紀にも記述があるという古来からの名所です。

旧内海(うちのみ)町草壁から北上し、標高280mのロープウエイ駅。山頂方面にむかう歩道をたどりました。

紅葉が有名ですがまだ少し早い感じ。歩く人はまばら。常緑と落葉の広葉樹が混交しています。歩道はずっと舗装されて、よく整備されていました。 

カシ類。アラカシ。

シラカシ。

アカガシ、ウバメガシ。

ナラ類。クヌギ。

アベマキ。

コナラ。

暖温帯らしくクスノキ科が豊富。シロダモ。

ヤブニッケイ。

カゴノキ。

ダンコウバイ。

カエデ類。オオモミジ。色づいた個体も。

イロハモミジ。

ウリハダカエデ。

イタヤカエデ。

シデ類。アカシデ。

イヌシデ。

ときおりスギの大径木。

カヤ。

コアカソ、ウツギ、ムラサキシキブ。

フジ、キヅタ。

ところどころ奇岩が顔をのぞかせます。小豆島の基岩は1億~6500万年前の深成岩(花崗岩)で、その上に1300万年前の火山 活動による集塊岩・安山岩が3層に重なる「キャップロック」と呼ばれる構造を持っています。それぞれの層が差別的に浸食されて急峻・複雑な景観がつくられているのだそう。

ヒサカキ。

ヤブツバキ。

イボタノキ。

ネズミモチ。

モチノキ、クロガネモチ。

次第に常緑種が少なくなってきます。落葉樹には紅葉の美しい樹種も多く、数週間後にはさぞ賑わうだろうと思われます。

コブシ、ヤマザクラ。

ケヤキ。

ノグルミ。

シラキ。

ニシキギ、ヌルデ。

クマノミズキ。

ヤマボウシ。

コバノミツバツツジ、サラサドウダン。

ガマズミ、コバノガマズミ。ここにもチョウジガマズミが分布していたようなのですが、出会えず。

標高570mほどの稜線に出て眺望が広がりました。300mほど登ってきたことになります。海からの風がさわやか。

ここに今回のハイライト。イワシデ。石灰岩地や岩尾根など限られた立地のみに分布しています。対馬で見ることができなかったので、はじめての出会い。

大きくはならず、樹高は4ー5mほど。株立ち状の樹形。

遠目にも尾根筋に沿って広く分布している様子が窺えました。

尾根上にはアカマツ。

ここにも芸術祭の展示。展望台になっていました。

ロープウエイの山頂駅に到達。歩き始めから2時間余り。意外と時間をかけてしまったので、帰りはロープウエイで一気に。

車上からすばらしい景観をたのしみました。わずか5分で帰着。冷温帯から暖温帯に戻った感がつよいです。


あちこち

小豆島と言えばオリーブ。車窓から畑や街路樹でも眺めることもできました。

「二十四の瞳」岬の分教場にも行ってみました。醤油樽。伝統的な木樽を見直す取り組みがはじまっているそうで、そのあたりも見たかったです。

坂出港近くから神懸山。

急な訪問でしたが、充実した1日でした。東端の福田港から姫路への航路から島を振り返りました。