別海 浜中 根室

2020年07月31日

夏の一日、名寄から道東まで出かけました。片道約350km。なかなか遠いです。。。

【西別湿原】(別海町別海) 

昼前に別海町に到着。中心街から西へ数㎞、最初の目的地は牧草地の中を走る道沿いにありました。看板がなければ見落としそうなところです。 

その看板も、茂った草で読みにくくなっていました。ここは「西別湿原」。ヤチカンバ(Betula ovalifolia Rupr)の自生地として知られています。 

ヤチカンバは、北極周辺のツンドラ地帯に分布するヒメカンバ類の1種で、氷河期の遺存種として、北海道ではここと更別村の2か所のみに自生しています。当初は新種として記載されたそうですが現在の分類では、大陸から朝鮮半島に分布する「ヒメオノオレ」に含まれています。矮性で、高さは1-2m程度に過ぎません。遠望すると、湿原内に、個体数はそれなりに多いように見えます。

湿原の中には立ち入れませんが、ヤチカンバは道端にもありました。葉の大きさは2-3cm。かわいいです。 

大きいのはシラカンバ。ヤチカンバは、下部から萌芽して株立ちしていました。


【火散布道有林】(浜名町火散布)

南に1時間ほど移動し、火散布(ひちりっぷ)道有林へ。林道沿いには造林地、皆伐跡地もありますが、発達した天然林が目立ちます。

看板がありました。「シロエゾマツ保護林」。「シロエゾマツ」はエゾマツ(クロエゾマツ)の変種とされ、北大天塩研究林で最初に記載されたものです(舘脇1932)。 

その特徴は樹皮。典型的なエゾマツとは異なり、樹皮の亀裂が少なく、むしろトドマツに似た様相を呈しています。周辺は、大径木も含む、シロエゾマツが優占する混交林でした。 

ハリギリ。 カツラ。 

オオバボダイジュ。 ホオノキ。 

イヌエンジュ。

イチイも目立ちました。この保護林に隣接して「イチイ保護林」もある とのことで、くるまを走らせて探しましたが見つけることができませんでした。 


【霧多布湿原】(浜名町霧多布) 

一般道に戻り、海沿いへ。有名な「琵琶瀬展望台」は海霧の中でした(さすが、霧多布)。写真は、霧がかかる前、北側の「湿原センター」から。 

「琵琶瀬歩道」を歩いてみました。エゾカンゾウが有名だそうですが、花期はすでに終わっていて、出会ったのは1人だけ。 

いくつか湿原の花が残っている中で、存在感があったのが、ノリウツギでした。ノリウツギがこれだけ湿原に多く生育するのは、私には新しい知見でした。 


【落石岬】(根室市落石西) 

東に1時間弱移動。車止めから徒歩10分ほどで、林の入口に到着しました。灯台への歩道が続いています。誰もいません。 

周辺には混交林も分布しているようですが、歩道沿いはほぼアカエゾマツの純林。 

林床はミズバショウとヤマドリゼンマイが目立ちました。アカエゾマツは凸な微地形上に立地しています。 

見た中では最大級、直径30cm程度のアカエゾマツ。樹齢はわかりませんが、舘脇(1943)の報告によれば、このサイズでも160年程度と(アカエゾマツとしては) 思ったほど高くないようです。林縁に出ると、台地上の高層湿原の周りをアカエゾマツ湿地林が囲んでいました。このあたりの樹高2.5mほどの個体も、同程度の樹齢とのこと。 

サカイツツジ。花の時期は、この歩道の主役です。サカイツツジは、サハリンから大陸に分布する矮小低木で、北海道ではここにのみ隔離分布しています。和名の「サカイ」は、旧樺太と旧ソ連の国境付近で発見されたことに因むそうです。次は花の時期に来たいものです。 

森の出口から落石岬灯台。海霧におおわれて、太平洋が望めなかったのは残念。ここでの気温は18度。昼の別海より10度も低い気温で、寒流の影響を実感しました。 


【春国岱】(根室市東梅・春国岱)

オホーツク海側に北上すると、天候が回復しました。まずは、ネーチャーセンターの周囲の歩道を散歩しました。やや湿性の、広葉樹の多い針広混交林でした。 

ハルニレ。ヤチダモ。 

オニグルミ。ダケカンバ 。

ヤマグワ。

くるまを移動して、根室湾と風連湖の間に発達した砂州である春国岱(しゅんくにたい)へ。海側の第一砂丘をしばらく歩いた後、内陸方向に、干潟の橋を渡って進みます。 

海岸から200mほどの第二砂丘上。アカエゾマツが生育しています。砂丘上の林分は、ここと国後島にしかありません。アカエゾマツ林の多様さを感じます。 本数密度はごく低いですが、春国岱の中にはもう少し発達した林もあるそうです。ここには、ミズナラとハリギリも目立ちました。 

採餌するエゾシカ。植生はその強い影響を受けています。 

第二から第三砂丘の眺め。枯死木が多いのは地盤沈下の影響とのこと。その第三砂丘、海岸から400mほど、歩道の一番奥へ。アカエゾマツの純林ですが、トドマツやミズナラの混交が次第に進んでいるとのこと。 

加えて、2015年10月の低気圧で大規模な風倒が生じたそうです。歩道からは、残念ながら、攪乱されていない箇所は見ることができませんでした。至るところに、根返りマウンド。 

針葉樹の更新が旺盛です。トドマツとアカエゾマツ 

ハンノキ。コバノヤマハンノキ。

アオダモ。イワツツジ。

時刻は17時。盛りだくさんだった一日を振り返り、砂丘上を戻りました。