奥日光 水辺の森たち
日光火山群に囲まれた標高1200~1700m前後の高原地域、奥日光。5千~数万年前の噴火による溶岩流が中禅寺湖や湯ノ湖といった堰止湖を形成し、また、冷涼多湿で降水量が多い気候条件が戦場ヶ原やその周辺に広大な湿地・氾濫原の発達を促しました。火山活動と気候・地形条件が複合的に作用して形成されたこの景観。そこに成立する森林もまた特徴的で多様です。
下界はすでに暑くなった7月。まだ若葉の雰囲気が残る森をたのしみました。
中禅寺湖南岸
昼過ぎに到着。歌が浜の駐車場から、湖岸に延びる散策路を進みます。
中禅寺湖の南岸は男体山の眺望がよく、比較的緩やかな地形でアクセスも良好だったことから、明治期から国際的な避暑地となりました。
アーネスト・サトウによる英国大使館別荘(1896年)。ここまでは舗装路で多くの人。
先に進むとイタリア大使館別荘(1928年)。スギの樹皮と薄板による市松模様の外装。
1934年に日光国立公園が制定されると周辺は新規の開発が抑制され、南岸は天然林が連続して残る景観が維持されました。
穏やかな湖岸が近接。ほぼ平坦でよく整備された気持ちよい道。標高は1270m。
ブナ。
イヌブナ。
隣接したイヌブナとブナ。樹形の違いが明瞭。
ミズナラ。この森の優占種。
大径木が多数。
ミズメ。
ウダイカンバ。
ダケカンバ。
オノオレカンバ。
サワグルミ。
ときどき優占する個所も。
針葉樹も混交。モミ。
ツガ。
コメツガ。
クロベ。
狸窪という地名がついたあたり。
ホオノキ、ナナカマド。
ヤマザクラ。
オヒョウ、ケヤマハンノキ。
ミズキ。
ときどき浜に出ながら。雲の間から男体山の眺望。
寺ケ崎という半島を過ぎてしばらくのあたりで引き返しました。
帰り道。
クマシデ。
コハウチワカエデ。
ウリハダカエデ。
コミネカエデ。
アサノハカエデ。
イタヤカエデ。
ヒトツバカエデ。
ナツツバキ。
オオバアサガラ。
アオダモ。
コシアブラ、ハリギリ。
シカの食害の影響で林床はとても疎な状況。
ササは部分的。チシマザサ。
マルバマンサク。
コマユミ。
ツタウルシ、ヤマウルシ。
ヤマブドウ、イワガラミ。
ノリウツギ、バイカウツギ。
リョウブ。
ハクサンシャクナゲ。
ミツバツツジ、アカヤシオ。
ウラジロヨウラク、サラサドウダン。
ミヤマガマズミ、オオカメノキ。
タニウツギ。
3時間余、最後まで静かな散策をたのしみました。
西ノ湖
赤沼駐車場からEVバス。初夏の好天日、満員で出発。
今回は訪れない湿原を横目に、約20分で西ノ湖入口に到着。
しばらくはカラマツ人工林。看板によると植栽は1970年。55年生ということになります。一部間伐が行われていました。
ズミ。もう花期は過ぎてしまいました。
ミヤマザクラ。
ケヤマハンノキ。
シロヤナギ。
20分ほど歩いて吊り橋をわたると保護林に入ります。一帯は、西ノ湖(さいのこ)と中禅寺湖の間の氾濫原に成立した湿潤立地性の天然林となっています。
そこは圧巻の広葉樹林。
ミズナラが優占。大径木が並んでいました。
最大直径は150cmに達しています。この大きさが、この森林の成立の契機となった大きな自然攪乱(氾濫?)からの長い時間を表しています。
ハルニレも優占種。こちらも直径100cmに近い個体が見られました。
北海道でもなかなか見られない林相です。黒く巻かれているのは食害防止用ネット。
そしてカツラの100cm級も。
倒木も巨大。カンバが更新。
シラカンバ、ダケカンバ。
両種が隣接。
ウダイカンバ。
シウリザクラ。
アズキナシ。
ナナカマド。
ヤマモミジ。
コハウチワカエデ。
オオイタヤメイゲツ。
イタヤカエデ。
キハダ。
シナノキ。
ハリギリ。
針葉樹はわずか。ウラジロモミ。
そして湖岸に近づくと。
ヤチダモが純林状になっている個所がありました。こちらも見事。
平均直径は60cm以上あるでしょうか。ミズナラーハルニレ林よりも最近の攪乱によって成立したと考えられます。
西ノ湖。ここにきてよかった!
千手ヶ浜
ここから千手ヶ浜にむかって気持ちのよい散策路を歩きます。引き続き氾濫原上の湿性天然林。大径木もあるものの全体に木のサイズが小さめなのは攪乱時期の違いなのでしょう。
ミズナラ。引き続き優占種。
ハルニレも。
ウダイカンバ。
シラカンバ。
ドロノキ。
オオバヤナギ。
サワシバ。
クマシデ。
ヤマモミジ。
オオイタヤメイゲツ。
コミネカエデ。
イタヤカエデ。
林床はかつてはササに覆われていたのだそう。シカ柵で保護されていました。
ニホンザル。
タムシバ、マルバマンサク。
マユミ、ツルウメモドキ。
ヤマブドウ。
ノリウツギ、バイカウツギ。
オオカメノキ、タニウツギ。
リョウブ。
ムラサキヤシオ、シロヤシオ。
ミツバツツジ。
ウラジロヨウラク。
千手ヶ浜に到着。湖岸は風がつよいもののすばらしい青空。
ここから湖岸を進む歩道に入りました。
コメツガ。
クロベ。
ウダイカンバ。
ウリハダカエデ。すごい密度の個所がありました。
イヌブナ。今日はこの道に入って初出。
そしてトチノキが出現。
トチノキの分布は(少々意外なのですが )いろは坂の下の標高域(800mほど)までで、奥日光ではこの個所周辺に限られているのだそう。ここは標高1300mほどなのでだいぶ隔離した分布です。とはいえ樹勢があり、直径2m近い個体を含め群生。
「栃窪」と名付けられていました。静かで美しい浜でした。
引き返してバス停へ。14時半のバスに間に合いました。4時間余の充実した時間。
湯ノ湖
夕方は雲が出てしまいました。標高1470m、湯ノ湖へ。溶岩流による堰止湖。北岸には温泉があり、湖から流れ出す川は冬でも凍りにくい温度だそうです。
湖岸に設けられた歩道を進みました。
クロベ。大径木がありました。
クロベだけでなく湖岸には針葉樹が優占する個所。
アスナロ。
林床に稚樹が多数。
コメツガ。
シウリザクラ。
ウダイカンバ。
ダケカンバ。
イタヤカエデ。
アオダモ。
ツルアジサイ、ノリウツギ。
バイカウツギ。
ハクサンシャクナゲ。
コメツツジ、ムラサキヤシオ。
オオカメノキ、タニウツギ。
チシマザサ。
針葉樹が優占する個所。
展望ができました。
ビジターセンター。
小峠
あいにく雨模様の天候。それでも少し標高高めの個所が見たかったので湯元温泉上の駐車場(1550m)。刈込・切込湖に至る歩道をしばし散策。
登り口すぐの大径木はカラマツ。自然分布を確信させる大きさ。
クロベ。こちらも大径で迫力があります。
ウラジロモミ。
コメツガ。
アスナロ。
ミズナラ。わずかな標高差かもしれませんが、急に目立たない印象。
ウダイカンバ。
ダケカンバ。
シウリザクラ。
ウラジロノキ。
アオダモ。
コシアブラ、ハリギリ。
オオイタヤメイゲツ。
ハウチワカエデ。
アサノハカエデ。
イタヤカエデ。
アカヤシオ。
ノリウツギ。
オオカメノキ、タニウツギ。
サルナシ。
ツルウメモドキ。
標高1600m付近に看板。次第に亜高山帯性の植生に移行するとの説明。
針葉樹が多い林相。
林床に稚樹。ウラジロモミ、コメツガ。
そして岩塊上などにはアスナロが高密度に更新。
ここから歩道は沢沿いに。サワグルミ。
ハンノキが優占する林相。
ヤハズハンノキが目立ちました。
ケヤマハンノキ。
オノエヤナギ。
沢の源頭部にヒロハカツラ。あざやかな新葉!
株立して生育。攪乱依存の更新をしているように見受けられます。
看板もありました。「谷間に香る木」
そのすぐ上が標高1672mの小峠でした。天候と時間のため今回はここまで。ただ、翌日はつよい雨になったので幸運だったと言わなければ。
初夏、印象深い森めぐりになりました。
