白老・ポロトの森
北海道の中南部、太平洋に面した白老町。ウポポイ・国立アイヌ民族博物館が開設されたポロト沼の畔にクリの保存林(国有林・クリ遺伝資源希少個体群保護林)があると知り、秋の一日散策に出かけました。クリは道央まで自生していますが、アイヌの神話には和人の住む内地から移入したという話しがあるそうです。栽培技術の伝播があったのでしょうか?
早朝に名寄を出発し朝8時、ポロト沼の奥にあるビジターセンターに到着。駐車場はキャンプ客のくるまでいっぱい。ポロト沼方面だけではなく、山の側にも歩道が整備されています。
下流側から歩くことにしました。敷地内を道央道が通過しているのですが、少し離れれば静寂な朝。
湿地の中央を流れるウツナイ川。周囲はポロト湿原と呼ばれ、面積25ヘクタールに達するとのこと。
湿原に沿って歩きます。カツラ。
イヌエンジュ。
エゾノバッコヤナギ。
やがてポロト沼畔に到達。ポロトはアイヌ語で「大きな沼」の意だそう。周囲4kmほど。
ここにクリの保存林があります。直径50cmほどの木が多く見られました。 ポロト沼に近いこの立地。かつて、どの程度人の影響を受けてきたのでしょうか。
ミズナラの大径木も多くありました。沼の空気がつたわるさわやかな林です。
まっすぐ歩けばウポポイに至るのですが、ここでは道を引き返し、ポロト沼から離れて上流方向へ。時折、わずかながら、トドマツ人工林。天然生の針葉樹の生育はごく限られていました。
林床はミヤコザサ。膝下ほどの高さ。
オオモミジ。沢沿いではカエデが優占種。紅葉にはまだ早い時期でしたが、数週間すればとても鮮やかでしょう。
イタヤカエデ。
ミズキ。
コマユミ、ツリバナ。
ヤマグワ 、ミツバウツギ。
分岐。エゾマツ人工林を通って、緩やかな登り道。
すぐに、ふたたび天然林へ。道はよく整備されていて迷うことはありませんでした。
ここでもクリが優占。直径30cmほどの木が多い二次林。時折、大径木も。 今秋、クリは豊作のようで、ずっとイガを踏んで歩いたくらいの印象でした。
ミズナラ。ドングリもまずまずの生り年のようでした。
一日を通して多かったサワシバ。こちらもよく結実していました。
アサダも優占種のひとつ。
キタコブシ、ホオノキ。
キハダ、サンショウ。
エゾヤマザクラ。
ナナカマド、アズキナシ。
シラカンバ、ダケカンバ、ウダイカンバ。道北と違いあまり多くありません。
シナノキ、アオダモ。
ハリギリ、コシアブラ。
30分ほど登ったところに休憩所。標高は110m。
ここからは起伏の少ない尾根沿いをたどります。
カシワが目立ちました。直径70cmほどの大径木も。
ミズナラの大径木も混交していました。アイヌの伝承では、三つ股のミズナラは山の神として尊ぶのだそう。
そして、コナラも。道北ではブナ科はミズナラ1種のみなので、とても多様に感じます。
クリも、途切れることなく。
低木類は多いのですが、稚樹はみかけません。多分に漏れずシカの食害の影響が強いようです。
今日一番の眺望。樽前山。ここから下り道。
ムラサキシキブ、紅葉が進んだアオダモ。
トドマツ、エゾマツの人工林。
下りきると、ポロト沼に注ぐウツナイ川の源流。「もみじ平」 と呼ばれますが、紅葉には早いので人に出会いません。
ここからは川の左岸の歩道を下りました。ふたたび天然林となり、ヤチダモ、ハルニレ。
ハシドイ、ウワミズザクラ。
ケヤマハンノキ、ハンノキ。
ホオノキの落葉。長さ40cm級。
イオルの森の看板。イオルとはアイヌ語で「生活の場」。生活に密着する10樹種ほどが植栽されていました。
ツタウルシ、エゾアジサイ、サルナシ。
お昼前に起点に戻りました。
ポロト湖のむこうに見えるウポポイ(国立アイヌ民族博物館)。このあと立ち寄ってみましたが、連休中でとても賑わっていました。
アイヌの生活と森林について考える一日になりました。