新潟 ブナ二次林 スギ人工林

2019年07月08日

かつてのホームグラウンド、新潟の森に行ってきました。学会等で訪れることはありましたが、森に行くのは久しぶりで、とてもたのしみにしてきました。

7月7日 朝、村上駅に到着。大学時代の先輩で、新潟県森林研究所の塚原さんと、研究室OBで村上市にある中嶋木材に勤める佐藤くんが迎えに来てくれました。佐藤くんの奥さんは4月から塚原さんの同僚ということで、不思議な縁を感じる3名で出発です。

今日は村上のお祭り(村上大祭)とのこと。とてもよい天気です。市街地を外れ、三面川を渡って北西へ。解禁になったばかりの鮎釣りをしている人の姿が目に入ります。 目的地は、市内高根地区。人口700名ほどの山村で、地域活動が盛んな地域とのこと。 

まずは、県道脇のスギ人工林。50年生で、最近、間伐が行われた箇所です。普段、スギ林を見ることが少ないので新鮮ということもありますが、適度な密度と伸びのよさが目立ち、とても気持ちよい林です。作業の実際について、いろいろ教えてもらいました。 

集落を抜けて、奥へ向かいます。よく整備された林道に沿って、現場を案内してもらいました。 林道の法面には、スギの実生がたくさん見られました。

最近の皆伐跡地。苗木が植えられています。切り株。ペンキで屋号が描かれています。 

苗木。3年生で、2000本植え。春植えも可能だが、農繁期と重なるため秋植えが一般的とのこと。なるほど。 遠くには、所有境界の目印として植えられた広葉樹。ときにここから良材が出ることもあるそう。 

周囲の70年生ほどの人工林。よく手入れされている印象です。一方、若齢の造林地では根曲がりが多く見られます。この地域では「雪起こし」の作業が不可欠です。造林コスト削減の議論、多雪地ではこの考慮も必要。確かに。 

こちらは「更新伐」の施工地。もともとアカマツ林人工で松枯れが進み、広葉樹が侵入しており、萌芽更新が期待できるということで、植栽を選択しなかったとのこと。萌芽更新の可能性、松枯れの現状、「更新伐」の適用条件、勉強になります。遠景は、奥山まで伐採が進んでいました。スギに代わって、ブナの植栽という選択肢も考えられているそうです。 

高根集落に戻って、旧小学校を改装した農家レストランで昼食。ソバ定食をおいしくいただきました。 

-----
村上市内に戻って、車を乗り換え。新潟市内へ。15時、恩師・紙谷先生と合流。南下して、栃尾を経由し、魚沼市(旧入広瀬村)大白川。民宿「才七」に宿泊。

山菜づくしの夕飯。紙谷先生のたくさんのアイデアを聞かせてもらいました。後半は、同宿のおじさん達と熱い話し。こういう雰囲気、久しぶりにたのしみました。 

-----

7月8日 朝食後、さっそくブナ林へ。今日もよい天気になりました。梅雨時期にラッキーです。

林齢約90年、炭焼き利用後に成立した二次林。たいへん美しい林相で、ブナ林独特の明るさ、いいなあと思います。大白川生産森林組合では、旧薪炭林のブナ二次林の間伐を、46年前(1973年)から行っているとのこと。この林分は46年前と24年前(1995年)の2回、実施されたそうです。丁寧に管理してきたことが、この見事な林相につながっていることを実感します。

間伐の効果! 二次林の木とは思えません。切り株を見ると、年輪幅が1cm近い(!)時期も見られ、以前の間伐の効果がわかります。 

林床にはブナの前生稚樹がたくさん。数えたくなります! 何回かの豊作年に対応した稚樹が階層を作っている箇所もありました。ササが少ないのも幸いしていますが、一部、下刈りも行われたとのこと。

5月に行われた、通常の間伐と、区画伐採の箇所を比較。後者は面積400-500m2、天然林で生じうる林冠ギャップのサイズに合わせた伐採です。 作業道との位置関係を考慮して両者を配置し、5ヘクタールの範囲を対象に、100立方メートルの材を生産したそうです。 

5月の伐採は需要側の事情で、想定外だったそうです。すみやかに運材されて製材されたとのこと(↓夕方、見に行きました)。根曲がり部分など、一般材相当以外は現場に残っていました。 これらの有効利用は、広葉樹生産では北海道を含めて共通の課題です。紙谷先生は、生産森林組合長さんらと具体的な検討をされていました。日頃、オガ粉生産にも携わる佐藤くんも交えて。 

小径部分は道の横に並べられていました。ナメコのタネ駒を総計4万個打ち込んだそうです。山にたのしみがあることは大切ですね。紙谷先生は、未利用部のさらなる利用のアイデアも考えておられるとのこと。

帰り途。原生林のようにも見えるブナ二次林。満喫しました。

----- 

午後は、県境を超えて福島県只見町に連れて行っていただきました。六十里越の峠道。田子倉ダムの風景。 

紙谷先生が館長を勤める、只見町ブナセンター。只見ユネスコエコパークの中核施設です。さまざまな展示がありましたが、 「カジゴ焼き」という炭焼き法(新潟とは異なる伏せ焼き)や、シナ皮(オオバボダイジュ)、マタタビ、アケビ、クルミ、ウルシ、ヒロロ(ミヤマカンスゲ)など、多彩な生活品が印象に残りました。

急ぎ足で、「あがりこ」の遊歩道へ。スギ林を登っていきますが、林縁には広葉樹が多く、北海道では出会えない種がたくさん。名前を思い出すのに時間がかかります。。。 

これが「あがりこ」です。豪雪地帯で、薪炭利用のための雪上伐採を繰り返すことによって、多くの枝が分枝した独特の形状が見事です。

樹種はコナラ。周囲にはクリやホオノキ、イタヤカエデのあがりこも見られました。ただ、周辺はナラ枯れが進んでいて、防除作業も行われているようですが、枯れてしまったものが多く見られました。少しでも残るとよいのですが。。。 

-----
再度、六十里越を超えて新潟県。栃尾を経由し、長岡市へ。 車中では、新潟の林業の現状や、森林・林産物の多目的利用について、いろいろ。ちょうど2時間で、最後の目的地、志田材木店に到着。

これは、午前中に大白川で見た、ブナが製材されたもの。製材は先週行われ、いくつかのスケジュールで乾燥に入っていました。今回の材の一部は、新潟駅の在来線待合室に使われるそうです。 

会社の入り口に展示されているブナの挽板。クワカミキリの穿孔による偽心を、あえて「ダメージ材」として活用しています。ブランド名は「スノービーチ」。なお、挽板の置台は、スギのCLT製とのこと。そちらの製造ラインも見せていただきました。 

工場内の、CLT製の壁。花火を図柄に、スギの節を装飾的に見せているのが、なかなか素敵です。

-----
長岡駅に送ってもらい、お別れ。短い時間でしたが、やはり現地を訪れるのはたのしく、勉強になりました。広葉樹施業の可能性・課題は、 北海道と共通する部分もあり、地域とのつながり方にも多くのヒントがありました。紙谷先生、塚原さん、佐藤くんも、本当にどうも有難うございました。