秩父 奥深い天然林

2023年09月30日

荒川の源流域一帯、秩父。東京近郊にありながら、ひときわ山深い印象のある地域です。最上流に位置する秩父市では森林率が84%、天然林率が60%とイメージどおりの高い値。以前から、秩父山地(いわゆる奥秩父)の天然林を歩いてみたいと思っていました。

今回は、全国演習林協議会が秩父市(東京大学秩父演習林)で行われたことによる訪問。あまり時間がなかったのですが、終了の翌日、朝の時間限定で天然林の登山道へ。東大の演習林は一般公開している歩道はないと聞き、前日に登山地図を頼りに歩くコースをいろいろ思案。

朝、やってきたのは、標高1000m、国道140号線の豆焼橋。天然林が多そうなのでここからのコースを歩くことに。 

深い渓谷にかかる高い橋の上から。国道は長いトンネルで山梨県へ通じています。その山の上は標高2000mの雁坂峠。そこへ向かう登山道を、時間(3時間限定 )の許すところまで歩いてみる計画です。

橋をわたると道標。ここから20分ほどは林道歩き。

今日は人工林はわずか。 スギとヒノキ。地域全体ではスギのほうが2倍ほどの面積なのだそう。

林道の終点が登山口。

最初は若めの二次林。

霧の中、とても静か。 斜面を横切るようにゆっくり登っていきました。次第に大きな木が増えてきます。

針葉樹の代表種はツガ。乾性の立地、標高1600mほどまで広く優占しています。この日出会ったのは純林というよりは針広混交林。

モミ。こちらも大径木が見られました。

サワラ、ヒノキ。あまり多くは見かけませんでしたが、ときどき出現。

広葉樹も大径木がみごとでした。

ブナ。

そして、イヌブナ。

ミズナラ。尾根上の乾性な立地に多く見られました。

シカの食害で、林床は乏しい状況。

攪乱跡地のミズメ。 こうした森では 、稚樹を見かけることはまれ。

ミズナラ。ドングリ、今年は成り年ではなかったよう。

ゆっくり登って1.5時間。「あせみ峠」に到着。峠地形ではありませんが、ちょうどよい休憩ポイント。あせみはアセビでしょうか。時間的にここで引き返すことに。

ミズメ、ウダイカンバ、ダケカンバ。

イヌシデ。

アカシデ、サワシバ。

クマシデ。

ツノハシバミ、アサダ。

下ってしばらく、陽が出ました。ゆっくりと霧が晴れていく様子は、舞台を見るかのよう。

ずっと暗かった森。晴れると、往路とは別の箇所のような趣でした。

そして、カエデ類。その豊富さ、今回のたのしみのひとつでした。オオモミジ、イロハモミジ。

コハウチワカエデ、ハウチワカエデ。

ヒナウチワカエデ。

ウリハダカエデ。

ホソエカエデ。

コミネカエデ、ミネカエデ。

エンコウカエデ、イタヤカエデ。

メグスリノキ。

チドリノキ。今回出会えたカエデは13種でした。

コブシ。

ホオノキ。

アワブキ。

ミヤマハハソ、マユミ。

ウワミズザクラ。

ケヤキ。

ミズキ、クマノミズキ。

ナツツバキ、リョウブ。

ハクウンボク、オオバアサガラ。

ミツバツツジ、アセビ。

アラゲアオダモ。

アオハダ。

コシアブラ。

帰りは少し遠望がききました。

渓畔種は前日の東大演習林内のエクスカーション時の写真を中心に。 カツラ、トチノキ。

サワグルミ。

シオジ。

コアジサイ、クサギ。

ヤシャブシ。

もう少し時間があれば、とも思いましたが、充実した3時間でした。


三峰神社

エクスカーションで訪れた、三峰神社。ご眷属(オオカミ)の信仰で知られています。

「苗木参萬本」 奉納の石碑。参道沿いに立ち並んでいました。

本殿の前にはスギの巨木。

周囲の景観が眺められました。

今回歩いたのは広い秩父のごくわずか。針広混交林域をたのしみましたが、もう少し登って亜高山帯の針葉樹林も見たかったところ。またあらためて訪れたいです。