秩父 奥深い天然林
荒川の源流域一帯、秩父。東京近郊にありながら、ひときわ山深い印象のある地域です。最上流に位置する秩父市では森林率が84%、天然林率が60%とイメージどおりの高い値。以前から、秩父山地(いわゆる奥秩父)の天然林を歩いてみたいと思っていました。
今回は、全国演習林協議会が秩父市(東京大学秩父演習林)で行われたことによる訪問。あまり時間がなかったのですが、終了の翌日、朝の時間限定で天然林の登山道へ。東大の演習林は一般公開している歩道はないと聞き、前日に登山地図を頼りに歩くコースをいろいろ思案。
朝、やってきたのは、標高1000m、国道140号線の豆焼橋。天然林が多そうなのでここからのコースを歩くことに。
深い渓谷にかかる高い橋の上から。国道は長いトンネルで山梨県へ通じています。その山の上は標高2000mの雁坂峠。そこへ向かう登山道を、時間(3時間限定 )の許すところまで歩いてみる計画です。
橋をわたると道標。ここから20分ほどは林道歩き。
今日は人工林はわずか。 スギとヒノキ。地域全体ではスギのほうが2倍ほどの面積なのだそう。
林道の終点が登山口。
最初は若めの二次林。
霧の中、とても静か。 斜面を横切るようにゆっくり登っていきました。次第に大きな木が増えてきます。
針葉樹の代表種はツガ。乾性の立地、標高1600mほどまで広く優占しています。この日出会ったのは純林というよりは針広混交林。
モミ。こちらも大径木が見られました。
サワラ、ヒノキ。あまり多くは見かけませんでしたが、ときどき出現。
広葉樹も大径木がみごとでした。
ブナ。
そして、イヌブナ。
ミズナラ。尾根上の乾性な立地に多く見られました。
シカの食害で、林床は乏しい状況。
攪乱跡地のミズメ。 こうした森では 、稚樹を見かけることはまれ。
ミズナラ。ドングリ、今年は成り年ではなかったよう。
ゆっくり登って1.5時間。「あせみ峠」に到着。峠地形ではありませんが、ちょうどよい休憩ポイント。あせみはアセビでしょうか。時間的にここで引き返すことに。
ミズメ、ウダイカンバ、ダケカンバ。
イヌシデ。
アカシデ、サワシバ。
クマシデ。
ツノハシバミ、アサダ。
下ってしばらく、陽が出ました。ゆっくりと霧が晴れていく様子は、舞台を見るかのよう。
ずっと暗かった森。晴れると、往路とは別の箇所のような趣でした。
そして、カエデ類。その豊富さ、今回のたのしみのひとつでした。オオモミジ、イロハモミジ。
コハウチワカエデ、ハウチワカエデ。
ヒナウチワカエデ。
ウリハダカエデ。
ホソエカエデ。
コミネカエデ、ミネカエデ。
エンコウカエデ、イタヤカエデ。
メグスリノキ。
チドリノキ。今回出会えたカエデは13種でした。
コブシ。
ホオノキ。
アワブキ。
ミヤマハハソ、マユミ。
ウワミズザクラ。
ケヤキ。
ミズキ、クマノミズキ。
ナツツバキ、リョウブ。
ハクウンボク、オオバアサガラ。
ミツバツツジ、アセビ。
アラゲアオダモ。
アオハダ。
コシアブラ。
帰りは少し遠望がききました。
渓畔種は前日の東大演習林内のエクスカーション時の写真を中心に。 カツラ、トチノキ。
サワグルミ。
シオジ。
コアジサイ、クサギ。
ヤシャブシ。
もう少し時間があれば、とも思いましたが、充実した3時間でした。
三峰神社
エクスカーションで訪れた、三峰神社。ご眷属(オオカミ)の信仰で知られています。
「苗木参萬本」 奉納の石碑。参道沿いに立ち並んでいました。
本殿の前にはスギの巨木。
周囲の景観が眺められました。
今回歩いたのは広い秩父のごくわずか。針広混交林域をたのしみましたが、もう少し登って亜高山帯の針葉樹林も見たかったところ。またあらためて訪れたいです。