大磯 木漏れ日の散策
相模湾に面する、神奈川県大磯。北西から相模平野に延びでた丘陵が海に近づいた先っぽ。貴重な森林が残っています。
2025年の年明け2日目。好天に誘われて、帰省中の実家からほど近いこの森を半日散策しました。
JR大磯駅を7時半に歩き始めました。住宅地の後ろに見えるのが目的の森。海岸からの距離はわずか1kmほど。
この1kmの中をJR東海道線と国道1号線が通っているのですが、時間を遡ればここはかつての東海道の宿場町。街道のおもかげが感じられる旧道を行くと、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」の看板。
そこにも描かれた松並木。
加えて目立ったのがエノキの大木。街道の一里塚にエノキが植えられた名残です(エノキが選ばれる理由には諸説あるものの、定説はなくよくわからない模様)。解説板によればここでは海側にエノキ、山側にセンダンがあったそう。センダンは見つけられず。
クスノキも大きく育っていました。大きく樹冠を広げる木が好まれたようです。
しばらく歩くと高来神社。裏手の高麗山(こまやま)に向かいます。
まずは初詣のお参り。
「高麗山」の名は朝鮮半島の「高句麗」に由来して います。この地が歴史に登場するのは奈良時代。高句麗滅亡後に渡来した王・若光がこの地に住み、その後も信仰の地として栄えたのだそうです。
本殿の前のご神木、ナギ。
イヌマキ。
ここから裏手に「県民の森」の歩道がついています。よい日柄で、歩く人ちらほら。
社寺林として長く保護された森の中を登っていきます。
優占種、スダジイ。直径50cmを超える大径木が見られました。
カシ類で目立ったのはアラカシ。
ウラジロガシも。
そしてクスノキ。
ヤブニッケイ。シロダモも見られました。
カゴノキ。
タブノキ。
常緑樹の中に、結構多く落葉広葉樹も混交していました。
街道沿いに引き続き、エノキ。淡く残った黄葉が味わい深いです。
ムクノキも多くありました。
イロハモミジ。紅葉は終わりかけなものの、陽をあびて心地よい色あい。
イヌビワ。
マルバウツギ。林床にかなり多く見られました。繊細な滋味深さは今日一番。
下界の音が聞こえてくるものの、森自体は深山のおもむき。
ヤマモモ。
ネズミモチ、モチノキ。
モクレイシ(ニシキギ科)。植生としてはこの森でもっとも注目の一種。台湾、琉球諸島、五島列島、九州南部に分布しますが、だいぶ離れて伊豆半島、伊豆諸島にも見られ、高麗山周辺は北限に近い分布地となっています。意外なほど多く出会うことができました。
サカキ、ヒサカキ。
ヤブツバキ。
アオキ。
オオアリドオシ(ニセジュズネノキ)。アリドオシより葉が大きく棘が短いのだそうです。
サンゴジュ(ガマズミ属)。
トベラ、ヤツデ。
開けると相模湾。
混交林には針葉樹も見られました。
カヤ。
そしてモミ。風格ある大径木もあって見事です。
スダジイのどんぐり。豊作年ではなかったようで、あまり多くは見かけませんでした。
ゆっくり歩き、息切れしないまま 1.5時間ほどで高麗山山頂。標高は168m。関東らしいのどかな空気。
植生の説明板。登ってきた南斜面は社寺林として長く保護され、県の天然記念物となっている旨。
ここからは尾根上を西に向かいます。
社寺林の域から出ると、かつて伐採が行われたこともあり立木密度が低くなりました。落葉広葉樹の比率が高いのは斜面方向(北斜面)の影響もあるとのこと。ときおり単木的に大径木。ケヤキ。
ムクノキ。
クヌギ。
コナラ。
イヌシデ、アカシデ。
ミズキ。
クマノミズキ。
ハリギリ。
コブシ。
ウワミズザクラ、カマツカ。
アオハダ、ムラサキシキブ。
ハコネウツギ。
尾根上はかつてはアカマツ林だったようですが、マツは見つけられませんでした。北斜面の一部は人工林。林床にはヤブラン。
ときおり密生していたアズマネザサ。
マルバニッケイ? 自然分布域は九州までなので、植栽由来かもしれません。
同じく、植えられたようにも見えるサツキ。
本日の最高標高点、浅間山(標高180m)を超えて千畳敷に到着。「湘南平」として知られ、車道も通じているので人がぐっと増えました。
展望台からは360度の視界。北には丹沢の大山、そして西には富士山。
南側には相模湾。東は江ノ島から三浦半島。西は伊豆半島。
景色を楽しんだ後、下り道は急坂。落葉広葉樹の二次林から、スギ人工林に変わっていきました。
中腹には古墳時代の横穴群。
歩道が錯綜していて、意外に早く車道に出てしまいました。
全行程、3時間弱で大磯駅に戻りました。お正月からよい散歩ができました。