大磯 木漏れ日の散策

2025年01月02日

相模湾に面する、神奈川県大磯。北西から相模平野に延びでた丘陵が海に近づいた先っぽ。貴重な森林が残っています。

2025年の年明け2日目。好天に誘われて、帰省中の実家からほど近いこの森を半日散策しました。

JR大磯駅を7時半に歩き始めました。住宅地の後ろに見えるのが目的の森。海岸からの距離はわずか1kmほど。

この1kmの中をJR東海道線と国道1号線が通っているのですが、時間を遡ればここはかつての東海道の宿場町。街道のおもかげが感じられる旧道を行くと、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」の看板。

そこにも描かれた松並木。

加えて目立ったのがエノキの大木。街道の一里塚にエノキが植えられた名残です(エノキが選ばれる理由には諸説あるものの、定説はなくよくわからない模様)。解説板によればここでは海側にエノキ、山側にセンダンがあったそう。センダンは見つけられず。

クスノキも大きく育っていました。大きく樹冠を広げる木が好まれたようです。

しばらく歩くと高来神社。裏手の高麗山(こまやま)に向かいます。

まずは初詣のお参り。

「高麗山」の名は朝鮮半島の「高句麗」に由来して います。この地が歴史に登場するのは奈良時代。高句麗滅亡後に渡来した王・若光がこの地に住み、その後も信仰の地として栄えたのだそうです。

本殿の前のご神木、ナギ。

イヌマキ。

ここから裏手に「県民の森」の歩道がついています。よい日柄で、歩く人ちらほら。

社寺林として長く保護された森の中を登っていきます。

優占種、スダジイ。直径50cmを超える大径木が見られました。

カシ類で目立ったのはアラカシ。

ウラジロガシも。

そしてクスノキ。

ヤブニッケイ。シロダモも見られました。

カゴノキ。

タブノキ。

常緑樹の中に、結構多く落葉広葉樹も混交していました。

街道沿いに引き続き、エノキ。淡く残った黄葉が味わい深いです。

ムクノキも多くありました。

イロハモミジ。紅葉は終わりかけなものの、陽をあびて心地よい色あい。

イヌビワ。

マルバウツギ。林床にかなり多く見られました。繊細な滋味深さは今日一番。

下界の音が聞こえてくるものの、森自体は深山のおもむき。

ヤマモモ。

ネズミモチ、モチノキ。

モクレイシ(ニシキギ科)。植生としてはこの森でもっとも注目の一種。台湾、琉球諸島、五島列島、九州南部に分布しますが、だいぶ離れて伊豆半島、伊豆諸島にも見られ、高麗山周辺は北限に近い分布地となっています。意外なほど多く出会うことができました。

サカキ、ヒサカキ。

ヤブツバキ。

アオキ。

オオアリドオシ(ニセジュズネノキ)。アリドオシより葉が大きく棘が短いのだそうです。

サンゴジュ(ガマズミ属)。

トベラ、ヤツデ。

開けると相模湾。

混交林には針葉樹も見られました。

カヤ。

そしてモミ。風格ある大径木もあって見事です。

スダジイのどんぐり。豊作年ではなかったようで、あまり多くは見かけませんでした。

ゆっくり歩き、息切れしないまま 1.5時間ほどで高麗山山頂。標高は168m。関東らしいのどかな空気。

植生の説明板。登ってきた南斜面は社寺林として長く保護され、県の天然記念物となっている旨。

ここからは尾根上を西に向かいます。 

社寺林の域から出ると、かつて伐採が行われたこともあり立木密度が低くなりました。落葉広葉樹の比率が高いのは斜面方向(北斜面)の影響もあるとのこと。ときおり単木的に大径木。ケヤキ。

ムクノキ。

クヌギ。

コナラ。

イヌシデ、アカシデ。

ミズキ。

クマノミズキ。

ハリギリ。

コブシ。

ウワミズザクラ、カマツカ。

アオハダ、ムラサキシキブ。

ハコネウツギ。

尾根上はかつてはアカマツ林だったようですが、マツは見つけられませんでした。北斜面の一部は人工林。林床にはヤブラン。

ときおり密生していたアズマネザサ。

マルバニッケイ? 自然分布域は九州までなので、植栽由来かもしれません。

同じく、植えられたようにも見えるサツキ。

本日の最高標高点、浅間山(標高180m)を超えて千畳敷に到着。「湘南平」として知られ、車道も通じているので人がぐっと増えました。

展望台からは360度の視界。北には丹沢の大山、そして西には富士山。

南側には相模湾。東は江ノ島から三浦半島。西は伊豆半島。

景色を楽しんだ後、下り道は急坂。落葉広葉樹の二次林から、スギ人工林に変わっていきました。

中腹には古墳時代の横穴群。

歩道が錯綜していて、意外に早く車道に出てしまいました。

全行程、3時間弱で大磯駅に戻りました。お正月からよい散歩ができました。