北八ヶ岳・縞枯山

2019年09月14日

縞枯山を見てきました。以前から気になっていたのですが、今回はじめて訪れます。

9月14日 連休初日なので、人がいっぱいです。ロープウェイを使って一気に標高2200mへ。 

快晴。南八ヶ岳の山やま。すでに亜高山帯の針葉樹林が眼前に広がっています。

少し歩くと、人が減って静かになりました。縞枯れが見え始めています。 

オオシラビソとシラビソ。 

このふたつが圧倒的な優占種ですが、混交比はどの程度でしょうか? 縞枯山周辺で行われた研究の成果を参照すると、全体としてはどちらかに著しく偏っているわけではないようです 

密な針葉樹林の中をゆっくり登っていきます。コケの林床が見事です。タチハイゴケ?

気がついた中では最大クラスの木。直径30cm、樹高は15-20mほど。

トウヒ。あまり目立ちませんが、ときどき現れました。大きいトウヒは根上りしていて、倒木更新起源であったことが伺えます 。

コメツガ。針葉樹としては、他に、サワラ、ハイマツ。 

ナナカマド。ほかに広葉樹で目立ったのは、ミネカエデ、ネコシデ。 

そして、ダケカンバ。多くは小径木でしたが、写真のような大径木も点在していました。 

歩き始めてからおよそ1時間で山頂に到着。山頂から少し進むと、展望が開けました。諏訪盆地の南側あたり。稜線には枯死木が多い箇所が広がっていました 。

大岩が重なる展望台。西-北方向は厚い雲に覆われていました。正面の茶臼山から縞枯れがよく見えるとのことなので、雲の動きを気にしながら、先を急ぎます。ごく最近のオオシラビソの倒木には、球果が付いていました。

下り15分、その後、15分登り返して、茶臼山展望台。写真で有名な光景ですが、来てよかったと思います。はっきりした縞が、4つほど。さきほど通過した山頂直下のものもよくわかります 。

「縞枯れ」は、とくにモミ属の森林で世界的に見られる、山腹斜面で帯状に枯死木が連続する現象です。日本では、東北-中部の亜高山帯で見られますが、八ヶ岳ではとくに顕著で、縞枯山はその代表です(北海道のトドマツ海岸林にも事例があります)。 

縞は、白く見える枯死帯から、斜面上部に向かって、成熟帯、幼樹帯があり、ふたたび枯死帯が現れるというパターンで形づくられています。

成熟帯→だいぶ育ってきた幼樹帯 →まだ小さい幼樹帯(枯死木が立ったまま) →枯死帯。

このような縞枯れの出現は、南-南西斜面に限られるそうです。その理由としては、この地域では主風方向が南-南西であることと関係しているとされます。左の写真では、樹冠が風上に偏った樹形と、縞枯れの方位が一致していることが見て取れます。枯死帯の上部の成熟帯は、主風をまともに受ける形になり、葉の物理的な落下、蒸散過多による水分バランスの悪化、根の損傷などの影響で枯死率が高まると考えられています。一方、時間が経過すれば、幼樹が育っていくため、全体に帯が上昇していくとされます。帯の移動速度は1-3m/年とする推計も出されていますが、近年の研究では、移動速度は、気象要因の影響を受けて、年変動が極めて大きいことも示唆されています。

南-南西以外の斜面では、このような規則的なパターンは出現せず、相対的に大きな木が見られます。そこでは、1-数本の木が枯死してその周囲の幼樹が育つ場合、あるいは、大きな台風時の強風などで広い面積が枯死して一斉に幼樹が育つ場合などがさまざまにあり、それぞれで、森林の発達の仕方や樹種構成が異なるというわけです 

下りは、別のルートで。すぐに、上から見たばかりの、大きな縞を横切ります。その反対側は、稚樹が密生していました 。

ササとコケ型の林床が接しているところ。コケの中には実生。シラビソ、オオシラビソ、どちら?

麦草峠との分岐点、植物群落保護林の看板。縞枯れを下から見上げることができました 

広いササ地を横切り、また、森林内へ。木道が整備されて歩きやすいコースでした。 

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ロープウェイの駅に戻りました。雄大な展望、発達した暗い森林、立ち枯れ木の集積、若木の成長。正味3時間あまり、森林のダイナミックな様子が目まぐるしく交互する、充実した散策でした。