沖縄・やんばるの森

2018年08月22日

北大研究林は、全国の大学研究林(演習林)と連携しています。そのひとつ、琉球大学の公開森林実習「亜熱帯林体験実習~亜熱帯林が広がるやんばる地域での人と自然の共生~」に参加してきました。

実習の舞台は、沖縄本島北部「やんばる」に位置する、琉球大学与那フィールドです。「公開森林実習」ということで、全国6大学から10名の学生さん(スタッフとして琉大の学生さんも3名)が集まりました。

* この記事は北大フィールド科学センター「森林実習ブログ」からの転載です

今回、初日は夕方集合。
与那フィールドの高嶋先生が、亜熱帯の特徴や、やんばる地域の森林・動植物についてじっくり説明してくださいました。

8月20日

研究林内の林道を散策します。おもに植生を観察しながら、亜熱帯林を満喫します。

高嶋先生、技術職員の外間さんらが、丁寧に解説してくださいました。  

優占種であるイタジイ(ブナ科) 。このような大径木(直径>40cm)は、かつての伐採時の伐り残しで、数は多くないとのこと。ノグチゲラやケナガネズミ、ヤンバルテナガコガネなど、沖縄固有種の多くが、大径木に依存して生活しているとの説明がありました。 

こちらも優占種のひとつである、イジュ(ツバキ科)の花 。時期ではないのですが、いくつか開花している個体がありました。6月に来てみたくなります。

リュウキュウマツ(マツ科)が優占する景観。マツ枯れの影響があるそうですが、健全な大径木は存在感があります。

リュウキュウコクタン(カキノキ科)。高級材好きにはたまらない存在です。これは44年生の造林地。成長には時間がかかるようです。

イヌマキ(マキ科)。こちらも高級材の樹種。造林は、虫害の影響があり難しいとのこと。

ハリギリ(ウコギ科)。高木種では唯一北海道と共通する構成種でした(リュウキュウハリギリと分類することもあるそうです)

ヒカゲヘゴ(ヘゴ科)。木生シダ。形状や模様に見入ってしまいます

この日の最高気温は32度。北海道では感じられない日射しの強さですが、木陰は意外に快適に歩けました。

宿舎に戻って昼食の後、午後はまず、沖縄本当北端の辺戸岬へ。青い空、青い海!

与那フィールドの里山研究園。琉大の学生さんが、卒論でとりくんでいるオキナワシャリンバイ(バラ科)の植栽試験地について説明。樹皮が紬の染料に用いられるそうです。ここには他にもモッコク(モッコク科:器具材)、ナギ(マキ科の針葉樹:器具材)の試験も行われていました。

午後、後半のテーマはヤンバルクイナ。東海岸を南下し、生態展示学習施設をたのしんだ後、夕方、野生の1羽にも会えました。

夕飯は、地元の方々手作りの沖縄料理をおいしくいただきました。その後、講義。ハードですが、充実した1日でした。     

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8月21日 

この日は台風19号の進路が心配されたのですが、幸い、雨にも降られず予定通り出発です。サンゴの白砂の海岸に立ち寄りました。風が強く波もありましたが、心配したほどではありません。こんな青空が見えるとは思いませんでした。  

その後、環境省の施設「ウフギー自然館」へ。アクティブレンジャーの佐藤さんに、スライドで解説をしていただきました。自然館の地図で高嶋先生が説明。今日から合流してくださった琉球大学の芝先生にもいろいろ教えていただきました。

東海岸に移動し、慶佐次川のマングローブ林を訪問。多様性の高さに感銘を受けました。

午後は、与那フィールドに戻り、試験地の見学です。説明してくださった琉球大学の松本先生 。高さ15mのタワーに登る前の説明です。前日夜の講義でも詳しく解説してくださったのですが、この森林では

  • タワーでの計測による炭素循環は、熱帯林に比肩する
  • 純一時生産量の高さに比して、蓄積量は多くない
  • 枯死量、土壌呼吸量がきわめて大きい
  • 蒸発散量も、熱帯林と同等のレベル

とのこと。枯死の多さは頻繁な台風の影響に起因しており、分解過程が相対的に卓越することが生物多様性の高さに寄与している、というのはとても魅力的な仮説でした。

タワー上部からの眺望。台風接近の予報から、上に登れるとは期待していませんでしたが、ラッキーでした。幹が目立つのがイタジイ。梢端部の枯死が多い様子がよくわかりました。

タワーを下った後、森林内部での物質循環の調査について。松本先生の研究室の大学院生が、成長量、リター量、呼吸量(幹・根・土壌)、流下雨量...と順番に説明してくれました。毎木調査では、50m四方で40種くらい出現するとのこと。多様性が高いです。

試験地の沢沿いに残る、オキナワウラジロガシ(ブナ科)の大径木。見事です。 

この日の夜はバーベキュー。芝先生、技術職員の知花さん、外間さん、研究員の知念さんから、興味深いお話をたくさん伺いました。

翌日はレポートの作成。そして解散。 参加した学生さんともいろいろ話ができました。 高嶋先生をはじめ、琉球大学のスタッフの皆さまにはたいへんお世話になり、あらためてお礼申し上げます。